白髪について


苦労すると増える?一晩で真っ白?

「白髪は苦労すると増える」と言われることがありますが、この因果関係はあまり無いと思います。
自分を振り返り「あの頃苦労した」と考える年代になる頃から白髪か少しずつ発生するので、このようなことが言われるのではないかと考えられます。
日本人の平均的な白髪の発生は大体35歳を過ぎた頃からと言われています。頭髪の半分が白髪になるのは大体55歳ぐらいからだとも言われています。 しかし、これも個人差がありますので、一概に言えないでしょう。ただ、老化現象が一因していることはありえます。

10代でかなりの白髪の発生を見る場合は、老化現象ではなく、他の要因も考えられます。 加齢が原因である以外に、内服薬、外用薬、疾病によっても白髪の発生があるようです。薬剤か何か毛乳頭組織の細胞の代謝機能に影響を与えるのではないかと考えられますが、すべて全く不明です。
たとえば、疾病においては、しろなまず(尋常性白斑)ができるとその部分に生えている毛が白髪化します。シラクモ(頭部白癬)に感染すると白髪化します。また、円形脱毛症の治っていく過程では白髪が生えてくることもあります。 本来、白髪の原因は、色素細胞の中にあるチロシンが酸化されて、メラニンになるものが、何らかの要因があってメラニンにならないことが原因だと言われていますが、詳しいことはまだ解明されていません。
チロシンにチロシナーゼという酵素が作用してdopaに転換されますが、このdopaがメラニン色素の元であり、チロシナーゼの欠落で色素を持たない白い動物の発生を見ることがあります。 このようなことから、白髪の原因として、銅を含む酸化酵素のチロシナーゼがチロシンからメラニン生成のdopaに関与してメラニンとなることから、チロシナーゼの不活性が原因だと言われています。

メラニンはアミノ酸の1種であるチロシンから次の過程を経てメラノサイトで作られます。

 チロシン→DOPA→ドーバーキノン→ロイコドーバークロム→ドーパークロム→ハイドロオキシインドール(インドール5・6キノン)→メラニン

毛髪の色も民族、人種により多種多様です。もともとは皮膚を紫外線から保護する目的で、南方民族の毛は黒色、北方の日光の弱い地域の人種は白から金色というように自然環境に適応するように長い年月の間に変化してきたのでしょうが、現在は遺伝子によって髪の色は定まってきます。そして、この毛髪の色を決定する色素メラニンは毛球部の外側、毛根鞘の部分にあるといわれるメラニン生成細胞、メラノサイトで作られ、毛髪組織内に分泌されているのです。 まだ生合成の詳細は解明されていないし、メラニン自体の化学構造も不明です。
ただ、従来黒褐色のメラニン色素がメラノサイトの中でタンパク質と結合して、メラノソームと呼ばれるメラニン顆粒となって分泌され、この多少で毛の色が定まってくるように言われていましたが、最近黄赤色のメラニンも発見され、人の毛の色はこの二種のメラニン顆粒の数、大きさ、重合度などの組み合せで定まってくる、という説が一般に通用しています(この黒いメラニンを真メラニン又はオイメラニンeumeianinと呼び、黄赤色のメラニンを亜メラニン又はフェオメラニンphaeomelaninと呼んでいる)

白髪は何故できるのかは、このメラニン色素が消失したものが白髪ですが、何故白髪になるのか、つまりメラノサイトがどういう場合にメラニン顆粒の生産を止めるのか、その辺の事情はまだ解明されていません。もちろん年齢と共に細胞機能が老化して、白髪が生えてくることはうなずけますが、ストレスによる白髪や、若白髪がどのような理由で発生するのか現在のところ全く不明なのです。
ただ同じ毛嚢内でもメラノサイトはケラノサイト(ケラチンをつくる細胞、つまり毛母細胞)とは全く別の挙動をするらしく、メラノサイトの機能は低下しても、ケラチノサイトは活発に分裂増殖しているので、色素のない白髪とはいえ強度や質は全く他の毛と変りありません。


一夜にして白髪になるという話を聞いたことがありますが、本当?

昔から恐怖や心労のあまり一夜にして白髪になった、という話をよく開きますが、これは話が誇大に伝わったのか、実際にそういう事実があるのか、私には経験がないので何ともいえませんが、既に生きた細胞でなくなった毛幹部、しかも神経も血管もない部分の色素が消滅することは料学的にあり得えないと考えています。