若ハゲと並んで、発生頻度が非常に高い脱毛症で、老若男女の別なく起こります

症状は、なんの前ぶれもなく、ある日突然、髪の毛がごっそりと抜けて、100円玉、500円玉ぐらいの丸いハゲが現われます。丸いといっても、まん丸ではなく楕円形のこともあります。
ほとんどの場合頭髪にできますが、まゆ毛、あごひげ、陰毛などにできることもあります。一般には、かゆみや痛みなどの前兆はありませんが、ある皮膚科のテキストには、「まれに、かゆみや赤みが出ることもある」と書かれています。

脱毛を起こした場所の皮膚は、比較的周りの皮膚より弾力が乏しく、また、多発型と言われる脱毛症の場合は、脱毛が起こる以前からも皮膚弾力に「張り」が無いことが多いようです。

そのほかに、子どもの円形脱毛には、その75パーセントにアトピー性皮膚炎が合併していると報告され、大人の場合でも20パーセント程度この合併がみられるといわれています。
また神経質な人がかかりやすいともいわれ、乗り物酔いしやすい、頭が重い、肩こり、手足が冷えやすい、下痢しやすいなどの、自律神経失調を思わせる症状を訴えるケースもあります。


円形脱毛症の原因については、現在、まだ定説はないのですが、医学的には、自己免疫説、末梢神経異常説、自律神経異常説などの諸説があります。

自己免疫説は、円形脱毛で抜けた毛にはリンパ球が多く含まれているという事実から、なんらかの原因で自己免疫機能が働いて、毛髪や毛根を体外に追い出してしまうというものです。自己免疫疾患であるアトピー性皮膚炎の子どもなどに、円形脱毛症が起きやすいことはこのためという解釈をしています。

末梢神経異常説というのは、肩や首のこりや痛みを訴える円形脱毛症の人の治療で、首を支える僧帽筋の中の後頭神経に麻酔薬を注射(ブロック注射)すると、ハゲている部分の皮膚温が上がり回復が早くなったという報告から、首の神経の異常が円形脱毛と関連しているのではないかとの考えのものです。

自律神経異常説は、かなりの信憑性をもっていわれている説ですが、ストレスが過剰になると、二つの自律神経のうらの交感神経が緊張して血管を収縮させるため、頭部への血流が悪くなり、毛根への栄養補給ができず仮死状態になり脱毛するというものです。

円形脱毛症は成長期毛性の脱毛ですが、抜けた毛根の特徴は栄養失調におちい った萎縮毛が多いことです。この萎縮毛は、毛根がちぢまったのではなく毛球が壊れたためにできるものです。これは自己免疫の異常で作られ、その形は干し大根のようです。

萎縮毛
休止期毛

また、円形脱毛症は単発型、多発型、多発融合型などのタイプに分類されます 。
脱毛の 所が一ヵ所のみの場合は単発性、数ヵ所なら多発性、また多数の病巣があり、それらが一部で融合しているものが多発融合型です。さらに悪性のものでは、頭部全体が脱毛してしまう全頭円形脱毛症やまゆ毛やまつ毛など体のほかの部分の毛も抜ける汎発性円形脱毛症に移行することもあります。

円形脱毛症の治療は、内服薬による全身治療と、脱毛部への局所治療があります。血管を拡張する作用がある薬やビタミンEなどで血流をよくしたり、ステロ イド剤の内服をしたりします。局所治療としては、ドライアイスを使った冷凍療法や、紫外線療法、スチーマーを利用した温熱療法などがあるほか、ステロイド剤を局部に塗布することで発毛を促す治療をしたりします。
軽度の円形脱毛症の場合は、育毛剤だけで改善することもあります。また、ストレス性の脱毛の場合は、ストレスが解消したり改善すると、自然治癒することもあります。

突然の脱毛はショックも大きく、何とか治したいという気持ちから、さまざまな治療にとびつきがちですが、まずは皮膚科で正しい診断を受け、医師の指示に従って適切な治療をすることが大切です。