■皮脂分泌過剰脱毛説
(正しいシャンプーの重要性)

男性型脱毛の頭皮は、皮脂でベトベトになり、ギラギラしている場合が多く見られます。
こうした皮脂分泌の過剰が脱毛を促進しています。皮脂分泌の過剰は、皮脂腺内の5αーリダクターゼとテストステロンが反応し、5α−DHAが活発に生成されると同時に起こります。(この5α−DHAが毛母の活動を抑制することは 説明しました)そして皮脂のベールは頭皮を完全に覆いつくします。特に毛穴のところでこびりつきます。そうすると毛根が酸欠状態になり、ケラチン層での硬化のための化学反応が抑制されます。
なぜなら、L−システィンがL−シスチンになるには、酸化という反応のために酸素を必要とします。そのとき血液中の酸素だけでは不足なので、頭皮よりの酸素供給が必要なのにもかかわらず、皮脂によって酸素が頭皮まで達しなくなるためです。こうして髪の毛の硬化が不十分となり、弱々しい毛になるのです。

また、皮脂過剰はもうひとつ悪さをします。頭皮表面の皮脂には、ほこりや細菌がこびりつきます。毛穴にこびりついた皮脂は簡単な洗髪では取れず、そこで細菌が繁殖します。この細菌のため頭皮や毛根が炎症を起こし、この炎症で毛母 が細胞分裂できなくなります。また頭皮上の皮脂は空気や光で酸化し、脂肪酸という毒素に変わってしまいます。この毒素も同じように頭皮や毛根の炎症の原因となります。この炎症は頭皮の血流にも影響し、栄養素が毛根に届かなくなります。
立毛筋付近の毛隆起に幹細胞という発毛に関わる重要な役割を果たす部分がありますが、皮脂分泌の過剰はこの部分にもダメージを与え、発毛の根を絶つとも言われています。皮脂過剰による脱毛が「脂漏性脱毛症」と特に名づけられるくらい、この皮脂過剰による頭皮や毛根への悪影響は大きく、むしろ5α−DH Aによる毛母抑制作用より脱毛への貢献は大きいのではないかという学者もいます。

現実問題として、毛穴に皮脂がこびりつくと育毛剤をつけても毛根に届かないわけですから、せっかくの治療も無駄になります。いかに皮脂分泌を抑えるか、毛穴の皮脂のこびりつきを取り除くか、これが脂漏性脱毛症克服のポイントとなります。

5α−DHAによる男性ホルモン型脱毛と脂漏性脱毛症は別個に考えるより、やはり同時に起きることがほとんどですから、相乗作用によって脱毛の進行を早めていると考えるべきでしょう。男性型脱毛で見られる頭皮の硬化、頭皮の低温化、毛細血管の血流不足は、これらの相乗作用の中での症状と言えるでしょう。